広島県中小企業団体中央会

082-228-0926(本所・広島)
084-922-4258(支所・福山)
chuokai@chuokai-hiroshima.or.jp

トップに聞く!組合・企業インタビュー

株式会社浜本工作所 「品質向上の経営改革で残業ゼロ、年収600万円への挑戦」 

2018-09-07

 “品質向上の経営改革で残業ゼロ、年収600万円への挑戦”
株式会社浜本工作所
代表取締役 濱本 陽平 氏

納期とコストには自信があった-浜本工作所のこれまで
 当社は、主に自動車などを製造する機械メーカー向けの精密部品加工を行っています。鉄工所を経営していた叔父が父に声をかけたのがきっかけで、昭和54年に精密板金業を創業、有限会社設立を経て、昨年、株式会社に組織変更しました。これまでは専務の立場で現場仕事に従事しておりましたが、平成28年から2代目社長に就任しました。
そもそも当社の特徴は、短納期・低コストで、「ウチより早いところはないんじゃないか」と思えるくらい自信はありました。しかし一方で、製品の品質や見た目に関しては同業他社に比べて見落とりしていたのも事実です。お客様から、「コストはかかっても良いから品質をもう少し上げてくれないか。」と言われ、とても情けない思いをしたこともあります。
 

 
高品質なものづくりへの取り組み
 社長に就任した私が目指したのは、「早い・安いが低品質」という我が社のイメージを払拭し、「浜本に頼んだらモノが違う」とお客様に言ってもらえるような、高品質なものづくりでした。その当時の当社のものづくりの体制は、機械設備についてはそれなりでしたが、人の手が加わる部分で品質が落ちていました。手作業での加工工程については品質基準も曖昧で、従業員毎で仕上げに差が出ていたのです。その改善を従業員に訴えましたが、10人程度の町工場でもトップダウンだけではなかなか従業員の意識を変えていくことは出来ません。
そこで品質管理自体を変えることに取り組み、工程毎の作業管理の徹底や、品質基準の統一、果ては製品の持ち運び方法に至るまで、品質向上に向けた改善を行いました。当初は、管理が厳しくなったことに抵抗感を示す従業員もいましたが、実際に品質が上がり、手直しやクレームが減っていくことを実感してからは、積極的に取り組んでくれるようになりました。
品質改善の取り組みが効果を出し始めた頃、省エネ補助金、ものづくり補助金を活用して設備投資を行いました。これまで当社では手が出せなかった高価な設備でしたが、手作業を機械化することで、高品質で均質なものづくりと大幅な生産能力向上が両立でき、さらなるコストダウンも可能となりました。少しずつ改善の効果が出てきていた当社にとって、その効果を大きく活かすことが出来るようになり、ターニングポイントとなりました。さらに、設備導入に合わせて5S活動を取り入れ、足の踏み場のなかった作業場を徹底的に整理・整頓・清掃し、今では外部からのお客様に「綺麗な工場ですね」と言われるようになりました。
 


品質改善の取り組みが労働環境の改善に繋がっていた!
 品質改善の取り組みの成果は、単に製品の品質が上がったことだけではなく、様々な場面に現れてきました。クレームや手直しが減ったことに加えて新しい設備による生産能力向上もあり、一人当たりの残業時間を月30~40時間も減らすことが出来たのです。定時で帰る日が続くと、「仕事が減ったのでは?」と心配する従業員もいましたが、受注した仕事は変わらず残業が減っただけですので売上げは変わりません。むしろ、全社員の給与を約15%上げる事が出来ました。土曜日出勤も殆ど無くなり、週休2日は当たり前になりました。
ただ、その一方で、新たな課題も生まれました。それは、定時内に作業を終わらせようとするあまり、検品チェックがおろそかになるというヒューマンエラーの発生です。現在は、再発を防止するために検品工程を見直していますが、工程全体についてもさらに効率化を進め、従業員の潜在能力、パフォーマンスをより一層引き出す仕組みを構築して行きたいと考えています。
 その他にも、取引先の当社への見方も変わって行きました。それまで定期的に修理を行っていた部品について、当社の生産能力・品質共に向上したことで、その部品自体を交換することとなったケースです。以前は、納期やコストのことしか問い合わせがありませんでしたが、最近では「こんなことはできないか?」と言う、問いかけを頂けるようになりました。
 
 


目指すは「残業ゼロ、年収600万円の町工場!」
 
仕事の品質を高めることで、給料は上がり、残業は少なく、休日もしっかり休めて、しかも会社も良くなる好循環に繋がりました。今後もこの取り組みをさらに進め、残業ゼロ、従業員年収600万円を達成した「東京の町工場の働き方改革」を目指して行きます。現状はようやく一人がその水準に達成しただけで、まだまだ道半ばです。今後は、経営者の努力に加えて、従業員も経営者の視点を持つことで、従業員へのリターンと会社へのリターンの両方を充実させていきたいと思います。
 
 株式会社浜本工作所
広島県呉市阿賀南2丁目9-44
T E L:0823-73-6957
FAX:0823-73-9377