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熊野筆事業協同組合 “様々な用途で利用され続ける“ 筆”の未来を見据えて~熊野筆組合の取り組み~” 

2015-04-14
理事長 本迫 修 氏

組合設立の経緯について教えてください
熊野筆事業協同組合の前身となる熊野商工業協同組合は、学校制度の改正により小学校での書道教育が行われなくなった事に対応するため設立されました。その後、時代の流れに応じて組織の改編を行い、昭和50年に毛筆業界では全国初、伝統的工芸品では中国地方初、通商産業大臣(現経済産業大臣)より「伝統的工芸品」の指定を受け、翌年、熊野独自の協同組合として、熊野筆事業協同組合が発足しました。

筆の生産地について教えてください
筆を生産する主な国は、需要も高い日本、中国、台湾です。日本では、古来より職人の手で、筆の一本一本を丁寧に製作しており、高い次元の品質を維持してきました。対照的に中国では、大量製造方式により幅広く普及しています。昨今中国では、景気過熱の影響から製品の製造単価が上昇しており、筆生産の分野は新たな局面を迎えています。

熊野筆の製作について教えてください
「筆」そのものは、芸術品ではありません。文字を書いたり絵を描いたりすることで、初めて芸術の一助となります。また、筆の原材料は熊野ではとれません。ほぼ海外からの輸入でまかなっています。主原料はイタチ、山羊、馬などですが、毛の性質は季節や、採集地域、雌雄の違いなどにより千差万別です。したがって、「質の異なる原材料から、安定して均一な高品質の筆をつくること」が非常にむずかしく、高度な技術と永年の経験が求められます。

化粧筆の成長について教えてください
化粧筆は、ここ十数年で急激に生産が伸びました。その要因は、国内外の有名なメイクアップアーティストから熊野筆を高級筆として評価されたことや、国内ではサッカー“なでしこJAPAN”の国民栄誉賞受賞の副賞で贈呈されたことです。また、積極的な販路拡大により、現在は東南アジアや欧米への輸出も盛んとなっています。

熊野筆の利用について教えてください
熊野筆は、昔から、小さな子供が学校や書道教室で字の書き方を習うのはもちろん、フォーマルな文書の作成や、プロの書道家が作品を仕上げる際にもよく利用されます。その他にも、誕生記念で赤ちゃんの頭髪を筆にしたり、漆器や陶器に絵や文字を描いたり、歯科技工士が作業に使用するなど、様々な用途で利用されております。

組合の課題について教えてください
職人の高齢化です。そこで、新たな職人を育成する為、組合では3ヵ月程度の実習を行うマイスタースクールを実施しています。しかし、筆を一人で作れるようになるのには、最低でも10年ほどの期間が必要になります。これからはマイスタースクールを修了した受講生が一人前になるまで安心して生活できる流れを作り、熊野町全体で伝統技術を支える環境を形成する事が、組合の喫緊の課題と捉えています。

今後の展望について教えてください
大学などの研究機関や書道団体などと連携し、低迷している書道筆需要をどう復活させるか画策しています。文部科学省が定める学習指導要領では、現在、小学校3年生から国語科の中で筆を使って文字を書く指導がされていますが、熊野町ではもう一歩踏み込んで、小学校1年生から書道を教え、幼少期から筆に親しみを持てる教育を行っています。また、熊野町にある「筆の里工房」と当組合で連携し、筆文化の普及活動を展開しています。日本独特の文字文化は、硬筆の書写ではなかなか伝えにくく、毛筆によって基礎から定着させる教えが有効です。今後は、学校で教える書写書道教育の充実や、書道から離れた大人が筆で文字を楽しく書く機会を、当組合でたくさん作っていければと考えております。



熊野筆事業協同組合
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